研究のこと
戦後日本の前衛芸術とメディアアート、そして創造的アーカイブへ
今日の、メディアの発展がもたらした現代だらではの芸術領域であるメディアアートを研究対象としています。この分野の面白いところは、我々の感覚器官と新しいメディアが相互に密接に関係を持ちながら、まるで、共感覚のようにアートとテクノロジーが日進月歩していると感じる点です。
そして、日本のメディアアートの先駆者といえば山口勝弘といえるでしょう。山口は1950年代に日本の前衛芸術集団「実験工房」に属し、1970年大阪万博のパビリオンをディレクションし、ビデオメディアによる表現活動を世界的にも牽引してきました。2018年に逝去しましたが、その山口の足跡と晩年の表現活動について、直接教えを受けた私は共同研究者と共に調査を継続しています。
近年、アート・アーカイブの手法を用いた現代美術作品の保全修復や再制作の試みが行われ始めています。しかし、メディアアートの特性のひとつであるテクノロジーに依拠した作品は、基盤となるソフトやハードの劣化により、オリジナルの状態での再現が極めて困難な状況となっています。この現状に挑戦する試みとして、創造的アーカイブの研究を始めています。
▼ウィキペディア「山口勝弘」 共同執筆 2015年初稿ページ公開
10個のキーワード
アンビルト・創造的アーカイブ・アヴァンギャルド・山口勝弘・前衛的精神・環境芸術・イマジナリウム ・実験工房・ヴィトリーヌ・メディアアート

プロジェクト・アートワーク
1【アンビルト作品の可視化に向けた創造的アート・アーカイブの試み】
かつてメディアアートの先駆者・山口勝弘は「アーカイブは生きている」と語っており、常に、創作にまつわる様々な資料が、新たな創造の種となることを強く意識していました。山口の逝去後、遺族から託された様々な資料を精査してゆく中で、これまで見過ごされてきた「アンビルト」案の存在をたくさん発見しました。本研究では、現代のメディア状況を予見した山口の「イマジナリウム」の思想を手掛りとし、デジタルメディアの機能を応用した「創造的アーカイブ」を開発し、山口が様々に書き残した刺激的な発想を可視化してゆきたいと考えています。(KAKEN10285413)
▼uroboros.researchによる研究の公開:yamaguchi katsuhiro artifact project
研究成果は随時アップデート
2【アートワーク】
何気ない日々の中で、ふと目にしたモノが無性に気になることがあります。それは、誰かの気配が感じられるモノだったり、なんとなくノスタルジックになることがあったりします。それを題材に作品制作をすることがあり、その行為は何だろう?と考えていました。ある日、美術家・今井祝雄氏が新作「おとだま」を発表された時、作品とアーカイブの関係について「アートの手法で保存する」と語られていました。これが結構しっくりきていて、この言葉が気に入っています。
アート表現を用いて保存する為の手法を追求するため、映像編集、Webや可視化プログラミング、アクリル画材、テキスト、フォトコラージュなど、様々な表現で、意図をカタチにしてゆきたいと考えています。
▼ミクストメディア "relation" 2020/02(モダンアート展/東京都美術館)

3【デザインプロジェクト:展覧会】
▼関連プロジェクト:フィリップ・ワイズベッカー展|京都 report:竹中大工道具館FB